2025年最初の企画展
「東北と北海道の浮世絵」(1月11日より)を開催いたします。

それに先立ち、主な展示作品を三つのテーマに分けてご紹介しております。

★後編は「歴史的・社会的な出来事を知る」です。




【後編】
歴史的・社会的な出来事を知る」




福 島

C157肉亭夏良 白虎隊英勇鑑白虎隊


肉亭夏良《白虎隊英勇鑑》 明治7(1874)

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歳の少年隊士たちで構成された「白虎隊」。
切腹する16名の隊士たちの最期の様子が描かれている。

慶応4年/明治元年(1868)、鳥羽・伏見の戦いを契機に始まった戊辰戦争でしたが、戦争の舞台は会津へと移り、会津藩と新政府軍の激闘が繰り広げられました。会津藩には、藩主の護衛を任務とする、1617歳の少年隊士たちで構成された「白虎隊」と呼ばれる部隊がありました。戦場から退却し、飯盛山に戻った白虎隊の隊士たちは、煙に包まれた鶴ヶ城(若松城)を見て、落城したと誤認して自刃したとされていました。しかし、実際は、隊士たちの間で今後の自分たちがとるべき道について議論し、捕虜となるよりは潔く自刃して武士の本分を果たすことを選んだとされています。本図には、切腹する16名の隊士たちの最期の様子が描かれています。

白虎隊について知る▶︎


C166井上探景 磐梯山噴火の図磐梯山噴火

井上探景《磐梯山噴火の図》 明治21年(1888)

近代日本における最も多くの犠牲者を出した火山災害。

明治21年(1888715日に起きた、福島の磐梯山噴火の様子を描いたものです。山頂からは噴煙が上がり、火口より飛んでくる噴石、逃げ惑う人々など、当時の深刻な災害状況を知ることができます。この噴火によって、約500人もの死傷者を出すという甚大な被害がもたらされ、明治以降の近代日本における最も多くの犠牲者を出した火山災害とされています。

磐梯山の噴火について▶︎




宮 城

C232三浦乾也開成丸調練帰帆図開成丸調練帰帆図
三浦乾也《開成丸調練帰帆図》 安政5(1858)

日本初の洋式軍艦「開成丸」!


開成丸は、長崎でオランダの造船技術を学んだ江戸の三浦乾也(
18211889)を招いて、安政34年(185657)にかけて仙台藩領内の
寒風沢(塩竃市)で造らせた、仙台藩の西洋式軍艦です。本図は、その開成丸が航海訓練を行った様子を描いたものです。当時は、西洋式の船を造った藩は全国でも少なく、東北では初めての西洋式軍艦となりました。しかし、速力などの問題もあり、数年後に石巻で解体されたといわれています。

洋式軍艦「開成丸」について▶︎




山 形

C185徳用奥羽屋ろうそく

《徳用奥羽屋》 慶応4年/明治元年(1868)

当時の政を皮肉ったこっけいな風刺浮世絵。


本図は、大政奉還後に起きた戊辰戦争における旧幕府派の東北諸藩と薩長を中心とする官軍との情勢を風刺したものです。両者の戦いが長引いている状況を、ろうそくの売買交渉がまとまらない様子で表されています。ろうそく屋ののれんの「徳用」の字が「徳川」とも読め、大番頭の着物には「アイツ」(会津)とあり、ろうそく屋の奥羽屋は会津藩を中心とする東北諸藩を表しています。一方、ろうそくの値段を交渉している人物の着物には「モウリ」(毛利)とあることから、交渉側は長州藩をはじめとする官軍を表しています。

酒田市のろうそくについて▶︎



北 海 道

C258三代歌川広重北海道新道切開北海道開拓

四代 歌川豊国《明治三年東本願寺現如上人北海道巡錫絵図 北海道新道切開》 明治4年(1871)

アイヌの人々の協力を得て、仏教の布教活動とともに開拓も進められた。


「明治三年東本願寺現如上人北海道巡錫絵図」(全
18枚、大判錦絵15枚と大判錦絵31組)は、明治3年(1870)の東本願寺現如上人一行による北海道での布教と新道開拓の工程が描かれたものです。二代歌川国輝を中心に、三代歌川広重、小林永濯、四代歌川豊国らによってまとめられました。18枚の内、当館には15枚(大判錦絵12枚と大判錦絵31組)所蔵されており、絵図にはアイヌの人々が多く登場し、布教活動や新道開拓がアイヌ人々の協力によって進められたことがうかがえます。本図にも、東本願寺の僧侶や士族ら移民たちがアイヌの人々と一緒に作業する姿が描かれており、遠景には「東本願寺切開新道」と記された柱が立てられています。新道の開拓は明治410月まで行われ、函館から札幌を結ぶ「本願寺道路」と呼ばれる新道が完成しました。


いかがだったでしょうか。

浮世絵は当時の様子を伝える貴重な記録画ではありますが

今でいう「漫画」に近いとも言われています。

現代のようにテレビやソーシャルネットワーク(SNS)など無い時代ですが

絵師によって世の中の出来事がこのようにして伝えられていた事は

とても貴重な情報源になり、現代も当時の歴史を知る「浮世絵」として

世界的なジャンルになりました。



今年の大河ドラマ「べらぼう」は
ポップカルチャーの礎を築い蔦屋重三郎の生涯を描いた作品。

浮世絵なども沢山出てくるようですね。

当館では1月11日(土)より、
企画展「丹波コレクション 東北・北海道の浮世絵」を開催いたします。
酒田市出身で日本を代表する浮世絵蒐集家・丹波恒夫氏(1881~1971)より、「丹波コレクション」と呼ばれる東北と北海道に関係する浮世絵116点をご寄贈いただいています。
本展では、このコレクションの中から、諸国の名所、物産とその生産工程、歴史的・社会的な出来事などを題材とした浮世絵をご紹介します。
ぜひ、ご覧くださいませ。


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